浦和地方裁判所 昭和43年(わ)151号 判決 1969年4月02日
本店所在地
埼玉県大宮市桜木町一丁目三一番地
名称
有限会社 とんこ
右代表者代表取締役
大久保国子
本籍
東京都豊島区池袋二丁目一一三四番地
住居
埼玉県与野市上落合九丁目八八六番地
会社役員
大久保国子
昭和七年七月一三日生
右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官末永秀夫出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人有限会社とんこを罰金二五〇万円に
被告人大久保国子を懲役四月に処する。
被告人大久保国子に対しこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。
理由
(罪となる事実)
被告人有限会社「とんこ」(以下被告会社という)は、大宮市桜木町一丁目三一番地に本店を置き、同店を含めて四店舗(昭和四〇年三月ごろまでは五店舗)を有し、飲食業の経営、旅館業の経営およびこれらに付帯する一切の業務を目的とする資本金三三〇万円(昭和三九年一〇月三日の資本増加以前は三〇万円)の有限会社、被告人大久保国子は、昭和三二年四月有限会社とんこ設立以来同会社の業務に従事し、代表取締役大久保ちう(夫昇の母)のもとで、昭和三九年九月二五日被告会社の取締役に、昭和四一年九月二〇日被告会社の代表取締役に就任し、爾来被告会社の業務を統括している者であるが、被告人大久保国子は、清水君枝(会社設立以来の取締役であるもの)、中島光子(昭和三九年九月二五日以来同会社取締役であるもの)および同被告人の夫大久保昇(かつて破産宣告を受けたことがあるため、営業の表面には出ないで、同会社従業員として実際上同会社を差配するもの)と共謀のうえ、被告会社の業務に関し、法人税を逋脱しようと企て
第一、 昭和三九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が一二八三万八七八五円、これに対する法人税額が四七二万八四〇〇円であるのにかかわらず、被告会社の売上の一部を正規帳簿に計上せず脱漏除外するなどによつて得た資金を取引銀行に架空名義などで預け入れるなどしたほか、架空の借入金を正規帳簿に計上するなど不正の方法によりその所得の一部を隠匿したうえ、昭和四〇年三月一日大宮市所在の所轄大宮税務署において同税務署長に対し同事業年度における被告会社の法人税確定申告をするに当り、その所得金額が三六三万三〇〇〇円、これに対する法人税額が一二三万〇五四〇円であると過少に記載した虚偽の法人税額の確定申告書を提出し、よつて不正の行為によりその差額三四九万七八〇〇円の法人税を逋脱し
第二、 昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が九七五万〇七一一円、これに対する法人税額が三四二万七五〇〇円であるのにかかわらず、 前同様の方法によりその所得の一部を隠匿したうえ、昭和四一年二月二八日前記大宮税務署において同税務署長に対し同事業年度における被告会社の法人税確定申告をするに当り、欠損金額一六一万八一八二円、これに対する法人税額が零であるとの虚偽の法人税額の確定申告書を提出し、よつて不正の行為によりその差額三四二万七五〇〇円の法人税を逋脱し
第三、 昭和四一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が一〇五七万七五三三円、これに対する法人税額が三四九万一九〇〇円であるのにかかわらず、前同様の方法によりその所得の一部を隠匿したうえ、昭和四二年二月二八日前記大宮税務署において同税務署長に対し同事業年度における被告会社の法人税確定申告をするに当り、その所得金額が三三九万〇三二五円、これに対する法人税額が九七万六六〇〇円であると過少に記載した虚偽の法人税額の確定申告書を提出し、よつて不正の行為によりその差額二五一万五三〇〇円の法人税を 脱したものである。
(証拠の標目)
判示全体の事実について
一、 被告人兼被告会社代表者大久保国子の
(1) 当公判廷における供述
(2) 大蔵事務官に対する質問てん末書(四通)および検察官に対する供述調書(三通)
(3) 作成した昭和四二年一一月二二日付答申書
(4) 作成した「提出書」と題する書面添付の登記簿謄本等
一、 大久保昇、清水君枝、中島光子の検察官に対する各供述調書
一、 中島光子の作成した昭和四二年一一月二七日付答申書
一、 斎藤二郎の大蔵事務官および検察官に対する供述調書
一、 大蔵事務官三井寿一郎の作成した「売上脱漏金額調査表」と題する書面
一、 登記官渡辺光重作成の閉鎖登記簿謄本
一、 岩浪清香の
(1) 作成した答申書
(2) 大蔵事務官に対する質問てん末書
一、 押収してある総勘定元帳昭和三九年ないし同四一年度分三綴(昭和四三年押第八五号の一ないし三)、売上帳(盆栽荘)(自昭和三八年一二月二五日至三九年四月一九日)四冊(同押号の三〇)、掛帳(盆栽荘)(自昭和三八年一二月一日至四二年九月八日)四冊(同押号の一一)、売上メモ帳(自昭和四一年一〇月一日至四二年九月八日)一冊(同押号の四四)、出金控帳(自昭和三八年一月一日至四二年九月一〇日)一冊(同押号の四五)、メモ帳(売上および給与関係)一冊(同押号の五一)、決算関係書類(自昭和三八年一月至四一年一二月)一綴(同押号の六一)、匿名預金手控メモ一綴(同押号の六二)、裏預金メモ二枚(同押号の六三)
判示第一の事実について
一、 大蔵事務官三井寿一郎作成の
(1) 脱税額計算書(自昭和三九年一月一日至三九年一二月三一日)
(2) 修正損益計算書(同右)、修正貸借対照表(同右)
(3) 調査所得(調査による増減金額)の説明書(同右)-損益科目、貸借科目各一通-
判示第二の事実について
一、 大蔵事務官三井寿一郎作成の
(1) 脱税額計算書(自昭和四〇年一月一日至四〇年一二月三一日)
(2) 修正損益計算書(同右)、修正貸借対照表(同右)
(3) 調査所得(調査による増減金額)の説明書(同右)-損益科目、貸借科目各一通-
判示第三の事実について
一、 大蔵事務官三井寿一郎作成の
(1) 脱税額計算書(自昭和四一年一月一日至四一年一二月三一日)
(2) 修正損益計算書(同右)、修正貸借対照表(同右)
(3) 調査所得(調査による増減金額)の説明書(同右)-損益科目、貸借科目各一通-
(法令の適用)
被告人大久保国子の判示第一の所為について
昭和四〇年法律第三四号付則一九条、同法律による改正前の法人税法四八条一項、刑法六〇条
被告会社の判示第一の所為について
前記付則一九条、右改正前の法人税法四八条一項、五一条一項
被告人大久保国子の判示第二、第三の各所為について
法人税法一五九条一項、刑法六〇条
被告会社の判示第二、第三の各所為について
法人税法一五九条一項、一六四条一項
被告人大久保国子について
その各罪につき懲役刑選択
併合罪加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条
刑の執行猶予 同法二五条一項一号
被告会社について併合罪併科
刑法四五条前段、四八条二項
訴訟費用の負担
刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 杉山英巳)